当センターの金成玟教授による書籍『日韓ポピュラー音楽史: 歌謡曲からK-POPの時代まで』(単著)が、2024年1月に慶應義塾大学出版会より出版されました。
【内容紹介】
坂本九からBTSまで、日本と韓国の音楽がおりなす戦後大衆史をたどる
私たちは「日韓」を超えられるのか? 「POPの夢」が、いまひらく――!
BTS、TWICE、BLACKPINK、NewJeans――今や世界的人気を誇るK-POPアーティストたち。彼らの活躍の裏には日韓がおりなした数十年にわたる歴史があった。抑圧と解放に翻弄されながら、大衆の欲望は、ポピュラー音楽の舞台の上で、反射しあい、ねじれ、交差する。歌謡曲から、韓国演歌、J-POP、K-POPの時代まで、日本と韓国はいかに自己/他者のイメージを構築し、欲望しあい、「POPの夢」を見たか。もうひとつの日韓戦後史を描き出す。
【目次】
はじめに
第Ⅰ部 歌謡曲の時代
第1章 演歌/トロットの誕生と音楽なき「日韓国交正常化」──李美子「トンベクアガシ」と倭色禁止
1 日韓国交正常化と「トンベクアガシ」
2 演歌の誕生──「アメリカ的なもの」と「戦後」をめぐる格闘
3 トロットと倭色歌謡──「従属」と「解放」のあいだ
4 「倭色」とは何か
5 音楽検閲としての倭色歌謡論
第2章 音楽大国日本への欲望──日韓のロックと「ヤマハ世界歌謡祭」
1 音楽大国化していく日本
2 日本語ロックと韓国語ロックの誕生とズレ
3 日韓の若者たちはなぜ出会えなかったのか
4 「韓国歌謡」の確立と日本の音楽的影響
5 日本の「世界歌謡祭」と「韓国歌謡」の国際化
第3章 「韓国演歌」の誕生と民主化前夜──李成愛、吉屋潤、チョー・ヨンピルの日本進出
1 李成愛の「カスマプゲ」と「韓国歌謡ブーム」
2 「よしや・じゅん」と「キル・オギュン」のあいだ
3 チョー・ヨンピルの「韓国演歌」
4 「朝鮮的なもの」の破壊
5 「倭色」という「認識=カテゴリー」──平岡正明がみた韓国
第Ⅱ部 J‐POPの時代
第4章 J‐POP一極化と「アジアン・ポップス」──ソテジワアイドゥル以降の韓国ポップ
1 J‐POPの誕生と韓国演歌の衰退
2 「アジアン・ポップス」をめぐる欲望
3 「韓国語ラップ」という異質さ
4 「アイドル」の概念をめぐるズレ
5 日本というフィルターと韓国音楽の真正性
第5章 禁止と開放の中間地点──T-SquareからX JAPANまで
1 解放/開放の時代としての「90年代」
2 T-Squareとカシオペアのサウンド
3 「剽窃論争」にみる「禁止」からの解放
4 「大衆」の影響力を可視化した「X JAPANブーム」
5 「ポンチャックの誕生」にみる「解放/開放」
第6章 東アジアの文化権力を変えるK‐POP──「韓国型アイドル」の誕生
1 「日本とアジア」のあいだの壁
2 東アジアの韓流とK-POPアイドル第一世代──H.O.T.の衝撃
3 K‐POPアイドルの世界観──日本のアイドルと比較して
4 欲望の共有──SMとエイベックスの協業
5 BoAから始まる日本のK-POP史
第Ⅲ部 K‐POPの時代
第7章 「J‐POP解禁」と2000年代日韓の軋轢──CHAGE and ASKA、安室奈美恵、嵐、そして渋谷系
1 「日本大衆文化開放」とCHAGE and ASKAの舞台
2 J‐POP解禁──安室奈美恵と嵐の上陸
3 渋谷系と弘大──「小さな日韓」のオルタナティブなムーブメント
4 なぜ「日流」は起こらなかったのか①――中島美嘉と草彅剛の現地化
5 なぜ「日流」は起こらなかったのか②──禁止の維持とトレンドの変化
第8章 J‐POPとK‐POPの分かれ道──KARA、少女時代、TWICEが変えた秩序
1 K‐POPが与えたアイデンティティの動揺
2 2010〜2011年のK‐POPブーム
3 「コリアン・インベイジョン」の重層
4 ガールグループからみえたもう一つの分かれ道
5 TWICEがもたらした「移動」の転換
第9章 ポップの夢──BTS現象とシティポップ・ブーム
1 BTSがたどり着いた「アメリカ」
2 グローバルファンダムが示した「日韓」の超え方
3 シティポップ・ブームが体現する「アメリカ」と「東京」
4 「プラットフォーム」としてのK‐POP
5 ポップと日韓の軌跡
おわりに
あとがき
注
参考文献
索引