書籍など

【共編著】『RE-END――死から問うテクノロジーと社会』

当センターの岡本亮輔教授が分担執筆者として参加した書籍『RE-END――死から問うテクノロジーと社会』(塚田有那・高橋ミレイ 編)が、2021年ビー・エヌ・エヌから出版されました。

 

【内容紹介】

──私たちは、よりよく死ねるだろうか?

死を問うことは、近現代が築いた社会を問い直すことでもあります。これまでいくつもの未来予測が描かれてきましたが、災害やパンデミックといった不可避の混乱に陥ったとき、どれだけ技術が進化しても生物に降りかかるものが「死」であり、多様な視点で文明を根底から見直す必要性に私たちは気づいたはずです。

いまや故人のデータはネットワーク上に残り、データ上で私たちは“死ねなくなる”ともいわれています。AIが過去の偉人をコピーしたり、バーチャル空間で死者と再会したりすることも可能な時代となりました。少子高齢化に伴い、住む土地への帰属意識や共同体が変化し、墓や葬儀のシステムも見直されてきています。そんな現代で、私たちは「死」とどう対峙していくのでしょうか。自分がいつか死ぬとき、大切な人が亡くなるとき、これからの時代では何が変化し、何が遺されるのでしょうか。

本書では、気鋭のマンガ家による描き下ろしのショートマンガや絵を織り交ぜながら、民俗学や人類学、情報社会学や人工知能研究といった多様な論者と、「死」という切り口からこれからのテクノロジーと社会を読み解いていきます。個人では向き合いづらいテーマであるからこそ、皆の知見をヒントに人間観を捉え直し、死生観のアップデートを試みましょう。死と向き合うことは、いまの生をとらえ直すことにもつながります。死の定義が変わるAI時代、本書が生と死のウェルビーイングを捉え直す契機となるはずです。

 

【目次】

序章
 【マンガ】「遠野物語」より 五十嵐大介
 はじめに 塚田有那

1章 RE-END 死と生の境界線を引き直す
 他者の死生を喚起するテクノロジーに向けて  ドミニク・チェン(情報学研究者)
 21世紀の「死者の書」―死者の公共性をめぐって  畑中章宏(民俗学者)
 生と死をふくむ風景―神話から考える未来の死との関係 石倉敏明(人類学者)
 【絵】すべてここから生まれここへ還って行く   諸星大二郎

2章 死の軌跡   わたしたちは死とどう対峙しているのか
 葬儀のゆくえ─日本人の宗教観と未来の葬送 岡本亮輔(宗教学者)
 看護と宗教をつなぐスピリチュアルケアの実践 玉置妙憂(僧侶、看護師)
 死者をおくる「おくりびと」―納棺士の仕事と現在 木村光希(納棺士)

3章 死後労働 AIが故人を再現する時代へ
 「死後労働」が始まる時代─死後データの意思表明プラットフォーム「D. E. A. D.」の挑戦 Whatever 富永勇亮・川村真司
 AIは作家を復活させることができるのか? 栗原聡(人工知能研究者)
 【マンガ】ようこそ! わたしの葬儀へ! うめ 小沢高広・妹尾朝子

4章 死後のアイデンティティと権利 個人データは誰のものか
 遺されるデータとアイデンティティ 折田明子(情報社会学者)
 死者のデータと法制度─個人データ、肖像・パブリシティ権、デジタル資産などの観点から 水野祐(弁護士)
 パーソナルデータは社会の資源になりえるか? 庄司昌彦(情報社会学者)
 ゲーム世界における〈他者〉とAI─「遊び」についての議論を手がかりに 橋迫瑞穂(宗教・ジェンダー社会学者)
 【マンガ】デジタルヘヴン  マンガ・ハミ山クリニカ+原作・宮本道人

5章 意思決定 医療の現場に生じる多様な選択
 科学が変容させる死生観と倫理の境界 小門穂(生命倫理研究者)
 死に直面する医療と意思決定のゆくえ 尾藤誠司(医師)

終章 死とテクノロジーのゆくえ
 【対談】21世紀、死者はどこへ向かうのか しりあがり寿(マンガ家)× 畑中章宏(民俗学者)
 【マンガ】「国が富士山のふもとに天国つくるってよ。」 しりあがり寿
 【対談】死を超越するライフログ  宇川直宏(DOMMUNE)× 山川道子(Production I.G)