当センターの岡本亮輔教授が参加した書籍『近代日本宗教史 第六巻 模索する現代:昭和後期〜平成期』(島薗進 ・末木文美士・大谷栄一・西村明 編)が、2021年春秋社から出版されました。
【内容紹介】
近代日本宗教史第六巻では高度経済成長も終わり、バブル経済も崩壊した経済的停滞の時代、阪神淡路大震災・東日本大震災に代表される災害の時代、つまり現代の宗教現象を扱う。本論では、戦前への反省から戦われる政教分離訴訟や、葬式のプレゼンスの低下から新たな道を模索する仏教、伝統宗教離れが進む一方で拡大したスピリチュアル市場の論理、資本主義の閉塞感とそれを打破しようとする言説、日本の他者としての沖縄、水俣病と宗教の関わり、精神世界ブームからグリーフケアまでの移り変わりが取り上げられる。コラムでは近年のパワースポットブーム、人口減少下での組織維持の取り組み、子宮系と呼ばれるスピリチュアリティ、東日本大震災後の人文学、災害ボランティアとしての宗教、日本仏教の生命倫理問題への応答が扱われる。
【目次】
第一章 総論 ――信仰共同体への帰属を超えた宗教性のゆくえ 島薗 進
一 はじめに
二 宗教集団と共同体の後退
三 スピリチュアリティの興隆
四 新宗教の新たな展開
五 公共空間と宗教
六 本書の構成
第二章 政教分離訴訟の展開 ――争われ続けてきた「宗教」 塚田穂高
一 「政教分離」は戦後社会の確固たる基盤?
二 政教分離訴訟の幕開け ――問題の発見と連結
三 「国のため」の死者の祀り方? ――慰霊・追悼・顕彰
四 時代の終わりと一つの画期
五 政教分離訴訟の新展開 ――揺らぐ前提
六 おわりに ――「宗教」のゆくえを映す場
――コラム① 巡礼ツーリズム 岡本亮輔
第三章 葬祭仏教と社会参加仏教 高橋 原
一 はじめに
二 葬祭仏教
三 社会参加仏教
四 仏教と臨床との(再)接近 ――葬祭仏教の復権と新たな社会参加の試み
五 おわりに
――コラム② 人口減少時代と宗教 川又俊則
第四章 消費社会と宗教の変容 ――聖なるものへの奉献から自己への奉献/投資へ 堀江宗正
一 宗教とカネの問題
二 個人的スピリチュアリティの領域における商品化と市場形成
三 結論 ――自己への奉献/投資
――コラム③ 妊娠・出産のスピリチュアリティ 橋迫瑞穂
第五章 ポスト世俗主義時代の技術と資本主義、そしてアニメの潜在性 川村覚文
一 はじめに
二 ディストピア的未来としての日本
三 反動としての日本思想論、または反復される近代の超克
四 アニメの潜在性
――コラム④ 人文学の死 ――震災と学問 磯前順一
第六章 縮図としての沖縄 及川 高
一 問題
二 沖縄の宗教
三 現代
――コラム⑤ 宗教の災害への応答 稲場圭信
第七章 癒しの力としての宗教・水俣 飯嶋秀治
一 はじめに
二 石牟礼道子(一九二七~二〇一八)の人生史
三 杉本栄子(一九三八~二〇一四)の人生史
四 緒方正人(一九五三~)の人生史
五 本願の会発足
六 水俣病犠牲者慰霊式と政治決着
七 火のまつり ――魚の視点
八 日月丸 ――開かれる回路
九 不知火 ――体験の結晶
一〇 内破された宗教
――コラム⑥ 生命倫理 前川健一
第八章 霊性と宗教 ――平成期 鎌田東二
一 昭和から平成へ ――成長と爛熟と拡散の時代
二 動乱の平成時代の始まり ――一九九〇年代
三 二〇〇〇年代の日本
四 二〇一〇年代の日本 ――東日本大震災と臨床宗教師